いまは思い切り時代を遡り、3000年近く前の作品、ホメロスの「イリアス」を読んでいる。
翻訳は松平千秋氏。現在上巻を読み終えたところだが。
まず驚いたのは、生きるも死ぬも神の一存として描かれていること。

  戦場において生き延びるているのは神に守られているからだし。
戦意が高揚するのも、何かを思いつくのも、神がそのように仕向けたから。
人類は「ホメロスにおいてオリュンポスの神々の見世物」(ヴァルター・ベンヤミン)で。
その気紛れに振り回される存在である。

  そんな神の意志に抗おうともせず素直のに従う彼らの姿は。
いまのわたしからは主体性が欠けているように見えてしまう。
このような世界にあっては。
現代の行動規範である「自分の人生は自分で切り開く」という考えは想像もしないだろう。
  ( 日経  ぼんやりとした未来の話 より )