昨年、「大地の再生技術研究所」の矢野智徳さんとの対談後、日比谷公園を歩いた。
庭づくりの基本は水脈と土中の空気の流れにあり、今の造園、農業、土木などは。

   それを壊していることに気づいた方だ。
「この木は弱っている、このゴミ箱を診なさい」と指された先は泥がはねていた。

   「土が固くなって水が吸い込まれず木が弱るのです」。
日比谷公園でゴミ箱をしみじみ眺めたのは初めてだった。

   そこで、庭を矢野さんに見ていただいた。
「木の声を聞き、風を読み、大地の呼吸を感じる」とおっしゃる矢野さん。

   「これがあるから風の道が閉ざされている」と。
庭のレンガの階段の一部を壊し始めたのにはびっくりした(後で納得)。

   次いで階段のあちこちの隅に小さな孔を開け、高度に炭化した特製の炭を入れ。
その上に落ち葉を置いていく作業が終わると、鎌の先の尖った鉄の棒を渡された。

茂り過ぎて風の道を閉ざしている葉を刈り、鉄の棒で土を柔らかくするようにとの指示だ。
それから1年半、土は柔らかく、樹木は元気で。、茂り過ぎというぜいたくな悩みに向き合いながら。

   大地や風の力を実感する日々である。

     (  日経  文化 より 「名前は木編に土二つ」 )