「親がどう戦争を伝えたかに僕は強く影響を受けている。
父は軍医として従軍した満州(現中国東北部)で結核となり本国に送還された。

   『おめおめと生き残った』という言葉があるようにサバイバーズギフトを感じて生きた。
父の姿や話から、負けるために戦ったという『むなしさ』」が僕に伝わった」。

   ・・・・戦争はむなしい?。
「むなしい。そのむなしさを否認したり美化したりすると、のみ込まれる。

   むなしさから逃げるのではなく、むなしさをかみしめましょうと言いたい」。
「人生は楽しさに満ちているわけではなく、何かを取りに行って見つからない時だってある。

   長崎は今日も雨、振り返っても風、探しものは見つからない、などと。
日本の歌はうまくむなしさをうたいあげてきた。

   本来は、虚しさ絵をかみしめられる土壌があるのだ」。
・・・いま、戦争がリアルに感じられない。

   「一例に全体の景色が水洗化、脱臭化された映像文化がある。
戦争の残酷さや血なまぐささが映されない。それでは全部が見えない。

   一方で全体を味わったとたんに、残酷さに慣れていない今の人は、拒絶を起こしやすい」。
「最近、アニメ『鬼滅の刃』を見ている。人間が鬼になる過程、人間の中にも鬼がいるという話が。

   血なまぐさく描かれていて面白い。それでも圧倒的にきれいbな世界だと感じる。
父はニュースを見ている僕に『これではなにが起こっているのか見えないだろ』と言い。

   よく戦争の話を聞かせた」。

 

       (  日経  文化 より  「戦争を知らない」はありえない )