大学では鳥類研究にどっぷりつかった。
シジュウカラに言語能力があるのではないかと考え始めたのは大学3年の冬。

   フィールドワークで訪れた長野県軽井沢町の森で、シジュウカラやコガラなど。
小型鳥類の集団を観察していると、特定の鳴き声に集団が特定の行動をとっていることに気づいた。

   「餌の場所や天敵の来襲を鳴き声で伝えあっているのかもしれない」。
持ち歩いていたノートにすぐに書き込んだ。

   大学院でもシジュウカラの行動研究を続けた。
観察によって、「この鳴き声はヘビを示す言葉だ」とか「言葉をつなぎ合わせて文章をつっていそうだ」。

   などと分かってきた。ただ、それを科学的に証明にするには観察だけでは不十分。
一つ一可能性について実験で確かめる作業が必要だった。

   そこで森の各地にシジュウカラの巣箱を設置。し
その近くにモズやヘビといった天敵の剥製製や模型を置くなどして。

   様々な状況での鳴き声を録音、分析していった。
こうした実験を重ねていくことで「シジュウカラの豊かな言葉の世界」を科学的に証明していった。

   そしてシジュウカラが鳴き声を組み合わせて、200パターン以上の発話をしていることが分かった。
従来の動物行動学は、例えば動物たちに人間の言葉を学ばせて。

   理解し話させるとかいった手法で研究されてきた。
だが「そもそも人間の言葉を動物たちに学ばせようとするのが間違いだった」。

   人には人の言葉があるように、鳥には鳥の言葉がある。
「どちらも動物の言葉にの一つにすぎない」。

 

       (  日経  My Story より  鈴木俊貴  動物言語学者 )