「原君、あんな選手をとってはいけない。部がダメになるぞ」

  そこまで言われてかえって意地になってしまった私は。
その選手の能力をしっかりと開花させ箱根駅伝に出てやろうと決めました。
しかし、その決断は最悪の結果を生んでしまったのです。

  問題部員の乱れた生活で…就任3年目の悲劇
その選手が寮に入るや否や、チーム内で抜群のタイムを出す反面、乱れた生活でチーム内をかき回したのです。
しかし、実力が抜きんでているだけに、ほかの部員は遠巻きに彼を傍観するだけです。
そんなチームが結果を残せるわけがなく、前年よりも成績は落ち込み。
陸上部は空中分解の危機に陥ったのです。
そして、しばらくしてその部員は辞めてしまいました。

  ただ、この3年目があったからこそ、「表現力豊かで、勉強もしっかり取り組める心根のいい選手」。
という青学陸上競技部のスカウトの基準を確立できたのも事実です。
高校生の頃は少々タイムが悪くても、自分でちゃんと考えてコツコツと練習に取り組み。
自分の言葉を大切にする子のほうが、大学4年間で圧倒的に伸びるということを知るきっかけになりました。

  原監督の信念「チーム力を押し上げるのは“心根の良い人間”」
また、仮にエースが抜けたとしても、「心根のいいヤツ」が揃う組織は、考え方次第で強化できるのです。
成績がいいだけで心根が悪い営業マンがいなくても、残りの心根がいい営業マンが少しずつ成績を上げれば。
その分をカバーできるからです。
( Number Web  より )