私は、以前、京セラの先輩からこんなエピソードを聞いたことがあります。

   当時、まだ40代だった稲盛社長とたまたま京都の町を一緒に歩いていたとき。
近くのデパートの壁に紳士服新春バーゲンの大きな垂れ幕が下がっていたそうです。

   稲盛さんはそれをちらりと見て、すぐに「俺は馬鹿だ。バーゲンの垂れ幕を見てしまった。
仕事に集中していない。恥ずかしい」とつぶやいたというのです。つまり。
「心にくだらないことが浮かんできた」ことを反省し、「私心を入れない強さが必要だ」と自戒したのです。

   その言葉を聞いた先輩は、稲盛さんの仕事への思いの強さに驚き。
尊敬の思いをさらに強くしたと話してくれました。

   このように、稲盛さんにはどんなときでもいささかの私心もはさまない強い克己心がありました。
ですから、成功し続けることができたのです。
稲盛さんは、「リーダーはいつも見られていると自覚すべき」だと注意をしていたのですが。
このエピソードは、それが事実であることも示しています。

   経営トップにはプライベートな時間はなく、365日、24時間。
多くの観客のいる舞台の上で主役を演じているようなものなのです。

   もし「話している」ことと「やっている」ことが少しでも違えば。
観客である社員や取引先の方、場合によっては株主の方も落胆し、去って行ってしまうこともあるのです。

   稲盛さんはpu「自分のことを棚に上げて議論できない」とも語っています。
常に見られている以上、「実はあのときは」と自分を棚に上げて言い訳をしても、誰も納得してくれません。
「言っている」ことと「やっている」ことは常に一致していなくては、つまり。
言行は一致していなければならないのです。

( プレジデント オンライン より)