トランプ大統領に近い若手の政治活動家が銃撃され死亡した。
各地の大学で活動し、巧みな対話術で若者にトランプ支持を広げた功労者のひとりとされる。

   容疑者は活動家を嫌悪し、薬きょうにファシストと刻んでいた、といった気になる情報もあるが。
拙速な決めつけは禁物めである。詳しい動機の解明を待たねばならぬ。

   もっとも、陰謀論の政治利用を徹底する大統領に、そうした正論は通じない。
事件直後に過激な左派の仕業だと示唆し、リベラル派攻撃の犬笛を鳴らした。

   分断をあおる愚挙と言わざるをえない。
ただ、ケネディ暗殺の陰謀論のように、不条理に命が失なわれる出来事が起きると。

   陰謀論が埋めれやすくなるのも確かである。
それは「大事な何かが奪われる」という不安と「複雑な世界をシンプルに解釈したい」という。

   欲望にかられるためだ。、と烏谷さんはみる。
いわば人間の弱さであり、誰もが陰謀論者になりうるということだろう。

          ( 日経  春秋   より   )