今日は一段と寒くなりましたねえ、真冬の寒さです。
空が、キレイに晴れ渡って、気持ちがいいです。
昨日の続きの話になります。
K先生には、ミノルとアキオという、2人の男の子がいました。
ミノルはお兄ちゃん、太っていて泣き虫、弟のアキオはK先生の母親、おばあちゃん似の無口な子でした。
ミノルが、泣かされると、おばあちゃん(K先生のお母さん)が出てきて、「仲良くしてやってなあ」と。
その後、K先生が、「川の土手を走っている」、という話が伝わってきました。
今と違って、中年の人がジョギングするなんて、田舎では珍しいことでしたから・・・。
へーっ、努力の人ですから、「生活習慣病でやせようと」走っているんだ、と思っていました。
中年になって、恥も外聞もなく、努力する姿は、大したものだと感心しました。
その後、遠く田舎を離れて、暮らしていた、私の耳に。
「K先生が自殺した」というニュースが飛び込んできました。
えっ、なんで、なんで・・・?
校長になって、何かトラブルを抱えていたのか?あるいは病気だったのか?、わかりません。
なんとなく、子供の頃のイジメに耐えて、努力して教師になり、校長になった人の人生が。
あっけなく終わってしまったことに、私はやりきれなさをおぼえました。
ホンダの、スーパーカブで隣の小学校に通勤していた姿が、今でも記憶の中にあります。
後日、アキオが、筑波大学に合格したという知らせが、私の耳にも届きました。
K先生の息子は優秀だった、という証し、になりました。
私は、「よくやった」と陰ながら、喜びました。
「最近であなたが人に優しくなれたときのことを教えてください」と教師は尋ねた。
はじめは戸惑いながらも、20人ほどの生徒たちが一人一人自身の体験を語り出す。
そのうち、見知らぬ者たちが集まったクラスの全員が、語る本人も含めて心を揺さぶられている。
すべての言葉が肯定的な感情を運んでくる。
誰もが他者の内にある善きものに触れ、教室全体が喜びに包まれている。
そんな話を教えてくれたのは、シンガポールから来日した若き作家のMさんだ。
Mさんは 、同地の大学で行われた創作ワークショップに参加したのだ。
どんな授業だったの、と僕が興味津々で尋ねたのは。
教師を務めたのが友人のインド系アメリカ人作家アキール・シャルマだったからだ。
( 日経 文化より 喜びと文学 小野正嗣 )