とかく、社交の場でもてはやされる「共通の話題」。
とはいえ、過信するのはいかがなものでしょうか。
ゴルフやキャンプ、映画に音楽・・・同好の士の間のやり取りは、濃密な語らいというより
特定ジャンルの「あるある」ネタの応酬、手持ちのカードのお披露目会になりがちです。

  「私と一緒だ!」と意気投合したり、「じゃあ、これ知ってる?」と知識量で優位に立とうとしたり。
神経衰弱やポーカーに興じるのと変わりありません。

  あるいはボクサーの減量でしょうか。
相手とのウエート差をなくして試合に臨むように、トークテーマを揃え。
「これ以上は踏み込まないで!」と境界線を引く。
「共通話題」とは、人間関係が破綻するリスクを最小化する工夫に過ぎず。
将来の蜜月を担保してくれる万能ツールではないのです。
ただの幻想というケースも珍しきくありません。

  少し前、国中が沸いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。
都内のラジオ局でエレベーターを待っていると、「昨日のニッポン凄かったですねー!」。
見れば、特につきあいもないスタッフです。
1試合も観ておらず、適当に相槌を打ってやり過ごした筆者。
コチラは素手なのに、キャッチボールを強要されるようなもので、げんなりしました。
  ( 日経  なやみのとびら より )