弁置換には機械弁と生体弁がある。機械弁は耐久性が高いが、血液が固まらないようにするため。
抗血液凝固薬(ワルファリン)を飲み続けなければならない。

   生体弁ならばワルファリンは不要だが、十数年後には再手術が必要になる可能性が高い。
私は55歳。手術中に術式を変更した執刀医が「長期に使える機械弁がいい」と判断した。

   術中の判断で私が判断する余地はなかったが、術後には納得した治療だった。
体への不安から退職した後は地元の東京都町田市で里山の再生・保全活動に参加していた。

   活動中、「何か背中が痛いな」と思うようになった。
近くの内科を受診すると「里山活動をしているから筋肉痛では」と言われた。

   「そうかなぁ」と思いつつ、痛みは収まらない。
手術を受けた東京医科大学病院の定期受診で相談してCT撮影した。帰宅後、夕方に医師から電話が入った。

   「別の大動脈がの解離が進んでおり、あす入院してください。緊急手術します」ということだった。
ワルファリンの影響で前の手術で縫合した部位の修復が十分でないという。

   「今後、また再手術が必要になったら…」。
不安が大きくなり思い切って担当医に「ワルファリンを止めたいので、生体弁にしてほしい」と伝えた。

   医師任せにしていたら自分が納得できる治療にならない。
自分で調べ、考え、率直に医師と話すことが必要と実感した。

            (  日経 向き合う より 「心臓弁膜症の全国組織設立」  )