岩手県花巻市の郊外住宅地にある「るんびにい美術館」は、一風変わった美術館だ。
お寺をもとにした社会福祉法人が2007年に開設。

   障害がある人の作品を展示するだけでなく、本当のボーダーレスを追求し。
あらゆる境界線を越えて存在する「命」を軸として企画展を行っている。

   私はこの美術館を準備段階から切り盛りしてきた。
美術館の2階にはアトリエを設け、現在は知的障害のある作家が10人ほど、定期的に通って制作に励んでいる。

   予約すれば見学も可能だ。これまでに多くの作家との出会いがあったが。
特に八重樫季良(きよし)さんには、美術館も私も大きな影響を与えられた。

   季良さんとはじめて会ったのは27年前。障害のある人のアートについても、その時に初めて知った。
40歳を過ぎた季良さんは、それまで誰にも絵を褒められたことがなかったという。

   それでも、「自分の絵は宇宙一だ」と言わんばかりに胸を張っていた。
季良さんに出会って、他者の評価に依存しないで生きられるんだと心を打たれた。

 

       ( 日経  文化 より アートで「命」に出会う美術館 )