しかし生きていくためには家賃を払わなければいけない。
ジャパニーズ・レストランでのてんぷらやとんかつの調理。ペンキ塗り。

   ミニマル・アートの作家ドナルド・ジャッドのビル管理人。
韓国出身の映像作家ナム・ジュン・パイクの看護と便利屋を続けた。

   周りには有名になって行く戦略的なアーティストがいる。
一方で私は、型にはまって仕事をムリにこなした後、やっぱろい無心のカケラ拾いで自分を取り戻す。

   50歳を過ぎて展示を重ね、「アーティスト」と呼ばれることが増えた。
だけど心から喜ぶこともできない。ただ続けていれば。自分なりに生きていくために。

   ずっとかけらと戯れ続けたい。名前があること、「有名」とはどういうことか。
「1日」とは何なのか。どれも同じようで、同じものは1つもない1年365個の作品を見て。

   ただ続けていればいいのだと思う。

         ( 日経  文化 より 「NY道端のカケラ集めて」 )