(二宮)フランスのジャーナリストは、優秀なサッカーの監督は名シェフと一緒だという。
今ある食材で最高の料理を作るのが名シェフ。人材に置き換えたら名監督になる。
将棋で言えば、今ある手駒でどう料理するか。そういったことを楽しめるのが名人なんだろう。


(羽生)足りないものを他から持ってきても、力にはならない。
足りない物なくても何とかすることで実力がつく。

日本の将棋は突出したている駒がない。強さのバラツキはなくして再利用のルールを作った。

(二宮)スーパーマンはいないが、役割分担すれば組織として機能するというのは人材活用にもいえる。
歩も「と金」になったら力を発揮する。


(羽生)と金は取られても歩だから、実は最強の駒。プロも、いかにしてと金を作るか考える。
「と金」は「金」の3倍ぐらい価値がある。

(二宮)スポーツの指導者で大切なものは解決力だ。「三年以内に優勝させる。
一年目はこう。二年目の歩留まりはこのくらいだ」ということを示せる指導者に人は付いて来る。
時間軸を設定できる人が本当のリーダーだ。

(羽生)どれくらい頑張ったら報われるかが残像として残っていれば、最後の踏ん張りが利く。
有能な指導者はこれぐらいやれば結果が出るというのが分かっているから、冷静でいられる。

(  日経   羽生義治 対談 二宮清純  より  )