山の稜線は、子どもが鉛筆で引く線に似ている。
まっすぐではなくて、だからこそ美しく、山と空の間を視線でなぞるだけで読書時のような愉悦を味わえる。

   隣を歩く子の目には、どんな線に見えているのだろう。
小学生のこの子は、旅行先などでよく、「これを絵にしたい」と言い出す。

   モニュメント、花火、鉄塔・・・。
徐(おもむろ)にリュックからスケッチブックを取り出し、線で景色を写し取る。

   私は線の引き方、そして、引けない戦について、思いを馳せる。
脳は人によって違う様式で動く、と聞いたことがある。

   言葉を思考軸にするタイプ、絵や映像のようなイメージで思考するタイプ。
音で思考するタイプ、他にも様々なタイプがあるらしい。

   私は言葉をメイン、隣にいる自閉スペクトラム症のある子は映像をメインに思考している気がする。

          ( 日経 文化     より  「山の稜線」 )