祈りの姿が美しい。群衆の歓呼に応える、穏やかなまなざし。
そしてなんといっても、教皇フランシスコは胸の底まで届く言葉を持つ人であったろう。

   2023年公開ドキュメンタリー映画「旅するローマ教皇」は。
この聖職者が抱き続けた使命感に迫っている。

   「私たちの社会が失ったのは、泣くという体験です」。
北アフリカから多くの難民が命を落とした地中海のランベドゥーサ島で、教皇はこう語りかけた。

   「無関心のグローバル化が泣くという力を奪ったのです」。
不寛容が渦巻く世界とそれをあおる権力者への厳しい批判である。

       ( 日経  春秋 より  )