当時、いつも私を応援してくれたのが部署の先輩だった齋藤信二さん。
のちにキリンビバレッジ社長になった方だ。

   赴任当初、納得できないことがあると、勢い余って社内者社外とわず衝突しがちな私に。
「磯村君、ああいう言い方はよくないね。ケンカになったら次につながらないだろ」。

   夜飲みに行くと、サラリーマンの行儀作法をゼロから教えてくれた。
「成果がでなくても、努力したことは無駄にならないよ」と励まされ言葉は、ずっと心に残っている。

   心優しき恩人である。神戸での7年間。悪戦苦闘するうちに販促策が当たるようになった。
「小岩井のチーズはおいしいけれど、6個パックなので高くて買えない」。

   こんな客の声を耳にしていたので、バラ売りをしようと社内で提案した。
1個ずつ製造日などを入れるのが大変だと反対されたが。

   諦めず道を探っていると工場を含め協力者が出てきた。
現場起点のアイデアが実りとてもよく売れた。こんな時も齋藤さんが後ろから支えてくれた。

 

       (  日経 私の履歴書 より 磯崎 功典 キリンHD会長CEO )