私の社長就任の発表を受けて、新聞は「早くから次期社長の有力候補と目されてきた」と書いた。

不祥事を受けての社長交代が続いた野村としては。
不祥事がらみではなく社長が交代したのは田淵義久氏の社長就任以来、18年ぶり。
氏家社長の時にただ1人の副社長として最高執行責任者(COO)も務めていたから。
世間には順当な人選という見方が多かったのだろう。

しかし、内心では「なぜ自分なのか」という自問を繰り返す日々が続いた。

社長になってからは、社内に請われて色紙にメッセージを記すことが増えた。
よく書いたのは「やってやれないことはない。やらずにできるわけがない」。
たくさん書いたので、今も持っている方はいるだろう。

色紙を読む側は、新社長から自分たちへの激励だと受け止めたのではないか。
本当はメッセージを書くことによって自分を鼓舞し、覚悟を決めようとしていた。
(  日経  私の履歴書 より  古賀信行 野村ホールディングス名誉顧問  )