「かかわらなければ/この愛しさを知るすべはなかった/この大らかな依存の安らいは得れられなかった」。
ハンセン病の療養所で生涯を過ごした詩人・塔和子さんの「胸の泉に」は。

   読むたびに熱い感情をたぎらせてくれる作品である。
差別と偏見にさいなまれ、あらがい、塔さんは香川県の大島青松園で70年を生き抜いた。

   その中で詩を書き、人間の尊厳をうたい、尊厳を踏みにじる現代を問うた。
この一編を最近よく思い出すのは、世に非寛容の空気が漂い、勇ましい言辞が弄ばれているからである。

   それをあおる権力者がいる。呼応する声が渦巻く。
新しい年がやってきた。気が付けば2000年代に入ってすでに四半世紀。

   かつて私たちが夢見た未来は、こんなふうに刺々(とげとげ)しくはなかったはずだ。異文化に。
あからさまな敵意を向けたり、共生をきれい事と冷笑したり、こういう社会はどこに向むかうのだろう。

   みんなあやかしの叫びに気を取られ、人間の顔を見ていない。
「ああ/何億の人がいようとも/かかわらなければ路傍の人/私の胸の泉に/枯れ葉いちまいも/

   落としてはくれない」。

           ( 日経 春秋 より  )