翻訳家の柴田元幸さんによると、少し前まで翻訳とは外国語のものを。
日本語に訳す営みを指すことが多かった。

   しかし今や日本語の小説が各地の言語で出版される「双方向的」な時代。
日本独自の食文化や習慣、オノマトベをいかにうまく言い換えるか。

   外国の読者との懸け橋となるのが柴田さんのような名翻訳家だろう。
「BUTTER」を訳したポリー・バートンさんは英語圏でカリスマ的人気を誇るそうだ。

   ロンドン大学で学び、文化庁が始めた第1回翻訳者育成事業で。
2012年、最優秀賞を勝ち取って、今のキャリアの道が開けた。

   「日本語を吸い込んでから、一旦それを忘れた状態で英語で吐き出す」。
自然体で言葉を操る名人だ。

       (  日経 春秋 より  )