この時期になると、はにかむようあ笑顔と朴訥とした口調。
そして確固たる意志を込めたまなざしを思い出す。

   アフガニスタンでの医療・農業支援に人生を賭した医師、中村哲さんのことだ。
凶弾に倒れる前年の秋、ふるさと福岡でインタビューをする機会に恵まれた。

   かねてノーベル平和賞の候補に挙げられ、国会議員に擁立する動きもあった。
そのことをどう思いますか。終わり間際に尋ねた。

   ちょっと間をおいて、「私は九州とアフガン東部のことしか知らないので・・・」。
答えはそれだけだったが、目の前になすべきことが多々あり、それ以外関心はない。

   そう言っている気がした。。

 

       ( 日経 春秋 より  )