アメとムチ。リーダーとして人を動かし組織を統べる要は両社の使い分けにあるとされる。
従順な者には報酬を増やし反抗すれば脅す。しかしもこの2つ以外にも魅力によって人を引っ張る道がある。

   メンバーが理念に共鳴し、喜んで仲間になる。そんな組織は強い。
国際社会で「飴と鞭を使う必要」を減らすため、ソフトパワーと名付けた魅力を生かすよう唱えたのが。

   米政治学者、ジョセフ・ナイ氏だった。パワーの中身は文化、政治的な理想、政策の魅力など。
民主主義、人権、個人にチャンスがあることも大事だ。

   欧州や旧共産圏で実際に米国はこの力で味方を増やしたと分析する。
ナイ氏の訃報が海の向こうから届いた。

   知日派として日米関係に汗をかき、日本にはこの力を強化するよう勧めた。
「魅力はつねに脅しよりつねに効果的だ」。

   「(ソフトパワーは)軍事的な勢力圏を越えて影響力を与えられる」。
著書にそう記す傍らで、母国には警鐘を鳴らした。

   「傲慢に振る舞えば、魅力は嫌悪感に一変する」。

       (  日経  春秋 より   )