玉音放送が流れた8月15日に、戦争がぴたりと終わったわけではない。
ソ連の侵攻はなお続き、混乱に巻き込まれた日本の民間人24万人が亡くなったとされる。

   「王道楽土」の夢を信じて大陸に渡った、膨大な数の人々が犠牲になったのである。
軍民合わせて57万人余はシベリアに抑留され、その1割ほどが命を落とした。

   戦後80年と言えば、惨禍ははるか遠くに思える。
しかし旧満州での出来事など、近年ようやく浮かび上がってきた事実も少なくない。

   戦争は終わらせるのが、なんと困難なのだろう。
木山はかろうじて戦闘を免れ、難民として冬を迎え、こんな歌を詠んだ。

   「飢ゑて死に凍えて死なん日もあらん/されども我は人は殺さじ」。

       (  日経  春秋 より  )