カメラは「誤審」を見逃さず、観客の目にもさらす。
「自分がフィールド上で見たものが必ずしも正しいとは限らない。

   現場で見たものと映像のギャップを掘り下げ、埋める作業は試合のたびに繰り返す」と笠原は言う。
テクノロジーはもはやアシストの域を超え、判定の主役になる未来が到来しそうでもある。

   それでも、「事後的な対処なら、他の誰かでもできる。
起こらないように端緒に気づき、先を読み、防ぐ。それがレフェリーの存在価値」と笠原は信じる。

   ピッチは人と人の感情が絡み合って生成される世界。
感情の動きも感知しつつマネジメントしていく点においては。

   感情を理解するヒトである主審に一日の長があるのかもしれない。
際どい判定はやり玉に挙げられ、いわれのな中傷に傷つく。

   「文句ばかり言われて何が楽しいのだろうと思う人が多いかもしれない」と笠原は苦笑いしながら。
「でも」と続ける。「この仕事は間違いなく人として成長できる。人生を豊かにしてくれる」。

       ( 日経  スポーツの流儀 より 「サッカーの『グレー』見定める」 )