40年近く独裁を敷いてきたエヤデマ大統領が05年に死去し、息子が後継に担がれた。世襲です。
大勢の子供の中から〝一番、良さそう〟な彼を側近たちが選んだ。それが現職のニャシンベ大統領です。

   「何もしない」優秀さ?

   優秀というなら、バリバリと指導力を発揮する大統領だ、と思うかもしれません。違うのです。
ニャシンベ大統領は「何もしない」ところが優秀なのです。ほとんど国民の前に出て来ない。
演説もほとんどしない。「これをすべき」とか「これが悪い」などと政治的な判断を一切しない。

   ニャシンベ大統領はその代わり、優れた人材を世界中から母国に呼び戻しました。
まず、国連開発計画(UNDP)から、ウングボ氏を首相に引っ張ってきた。
彼は国際農業開発基金(IFAD)総裁を経て、現在、国際労働機関(ILO)事務局長です。
国連本部事務局からは、バワラ氏を開発大臣として引き抜いた。
他にも、閣僚クラスに何人もそうした人物がいます。  

  彼自身、米ジョージワシントン大でMBAも履修したエリートです。自分の能力に自信がないはずはない。
しかし、国家運営の全てを優秀な官僚に任せ、自分は一切、口出しをしない。
異色の〝リーダーシップ〟の結果、私が大使を務めたわずか3年間に、トーゴは見違えるように発展しました。

   ロメの幹線道路は、欧州連合(EU)からの資金で立派に舗装された。
ロメ港は、近隣港には珍しい15メートルという水深を生かし、大コンテナ港へと変貌を遂げました。

   ロメ空港はエチオピア航空と提携し、西アフリカ地域のハブ空港になりました。
ロメの街は今、ビジネスで活況を呈しています。

       (  産経新聞 より  )