撮影地点を特定するため、旧写真のキャプションをもとにあたりを付け。
グーグルマップのストリートビューなどで予習してから現地に赴く。

   山並みや道の形も参考にしつつ歩き、それでも分からない場合は老舗と思しき商家や。
地元の地理歴史に詳しそうなお年寄りに聞き込みをする。

   「この場所を探しているんです」。
岡山県備前市の片上港を見下ろす、撮影地点のを探して丘を上がったとき。

   目に付いた家で80歳ぐらいの女性に尋ねた。
地元をよく知る人だったようで「でもう少し上がるとこんな風に見えます」と教えてくれた。

   帰りにお礼を言うと「昔は北陸(石川県)の片山津温泉にいたのよ」と語る。
以前撮影したことのある場所だった。

  後日、今昔の写真を送ると「懐かしい写真をありがとう」と書かれた手紙とともに備前焼の器が届いた。
郷里を離れ、新しい地に移り、根付いたところがまた故郷になる。

   100年間、どれだけの人がこの女性のような経験をしたのだろう。

            (  日経 文化 より 「昭和100年 景観今昔めぐり」  )