県議だった父の話ばかり書いてきたが。
父の義兄になる夏堀源三郎は46年から60年まで衆議院議員を務め、62年に亡くなっていた。

  ある日、夏堀家の当主に呼び出された。
政治や宗教などさまざまなことをご教示いただいた。
要するに、自分は田名部さんを応援するので、歩調を合わせてほしいということだった。
自民党員としては公認候補を推すのが筋だ。
忍の一字で耐えたが、改めて政治の恐ろしさ、怨念の深さを痛感させられ、学ぶことが多かった。

  人間は理だけで動くものではない。
そこのはどうしても情念も動く。
だが、情念だけで行動すると、今度はその後始末に苦労することになる。
最後は大局を見て、道義に従って行動するしかない。
政治の道は日々、そのことを自問自答して決断を下すという大変な作業だと思う。
(  日経  私の履歴書 より  大島理森  )