そこで出会ったのがダーウィンの「種の起源」だ。強いものや賢いものが勝つのではない。
変化に適応できるものが生き残るのだと知り「なるほど、と合点がいった」。
将来何が起こるかは誰にもわからない。どこに居合わせるかは運命で、どう適応するかは自分次第。
「ならば川の流れに身を任せ、岩にぶつかったり濁流にのまれたりしながら。
流れ着いた場所でベストを尽くそう」。
積極的にながっされる生き方を選んだことで、人生は思いもよらない方向に拓けていった。

  卒業後は弁護士になるつもりで友人と2人、司法試験の勉強をしていた。
ある日、友人に「万が一ダメだったときのため、滑り止めの会社を受けておこう」といわれた。
彼が住む三条の下宿から京阪電車に乗り、終点の淀屋橋に着くと、駅に直結して日本生命の本店があった。
事情を説明すると「落ちたら採用するから安心して勉強してください」と励まされた。
結果は不合格。これも運命と2人で入社した。
  (  日経 Mystory より   出口治明  立命館アジア太平洋大学 学長  )