私も経験がある。横浜(現DeNA)の監督時代、通算2000安打目前の駒田徳広を2軍調整とした。
いろいろいわれたが、本人は打ちたい、打ちたいと気持ちがはやって空回り。

   1度リフレッシュした方がいい、と私は考えた。じきに駒田は1軍に戻り、記録を達成した。
私は一切手心を加えなかった。チャンスをつかんだのは駒田本人だ。

   打撃の調子と関係なく、ベンチとしては彼を起用する理由があった。それは守備。
動ける範囲は広くなかったが、長身をバタッと倒して届くところな。
抜群のミットさばきで全部アウトにした。

   あの守備力は欠かせなかった。結局は実力。
試合に出られるかどうか、新人もベテランも条件は同じ。

   それが勝負の世界の鉄則だ。抑えはやはり増田でないと、とか田中将がいないと先発が回らない、とか。
起用する理由があればベンチは投げさせる。

   記録は誰かが作らせるものではなく、自ら作るもの。そうでなくては数字の値打ちもない。

       (  日経  悠々球論 より  )