だが「オークションは何が起きるか分からない即興劇のようなもの。
(入札に使われる)電話回線のほんの少しの乱れが思わぬ結果を生むこともあります。

   例えるなら私はパイロット。飛行経験の長さはもちろん役に立ちますが。
どんなベテラン操縦士でも飛行機が絶対に墜落しないとは断言できない。

   だからこそ準備を欠かかさず、オークション前は一人でリハーサルを繰り返す。
声色、表情、視線、リズム。全てが競売の成否を左右する。一度限りの真剣勝負。

   出席者を楽しませるために、オークションにDJプレーを導入したり。
会場に郵便配達員の格好で現れたり。その演出は単なる売買の場を越えたエンターテイメント。

   ショーの成功はその日の落札金額という形で、はっきり表れるからスリリングだ。
落札を知らせるハンマーを動くのはで数千万円、数億円規模になることも珍しくない。

   考えただけで胃が痛くなりそうだが、なぜ続けていけるのか。
にっこり笑って、こう答えた。「私のエンジンは若いときと変わらず好奇心です。

   アートは決して止まりません。音楽んも決して止まりません。
時々『もうすばらしい芸術は生まれない』という人がいます。それはナンセンス。

   いつだって素晴らしい芸術があり、新しい芸術がある」。

 

       ( 日経  My story より シモン・デ・プリ  オークショア )