ほどなく、メンバーの末広信幸君と宗田慎二君がバンドを辞めたいと言い出した。
このまま続けるのは不安だ。きちんと就職したいという。

   彼らからは「財津の敷いたレールの上は歩けない」とも言われた。
ショックだった。手足をもぎ取られた気分だった。

   私自身、成功する確信は持てなかったから不安は理解できる。
同時に自分はこれまでかなり強引にやってきたんだろうな、という反省があった。

   私にとってはプロになることが第一義だから、音楽的には厳しいことも言ってきた。
でも、目標は共有できていると誤解していた。

   ちょっとした路線の違いでなく、人生の岐路に関わるだから、説得も関係修復も不可能だ。
私は地図を書き換えざるを得なかった。。

       ( 日経  私の履歴書 より 在津和夫 シンガーソングライター )