代役で遊撃を守った中野拓夢(阪神)は足を使っているものの、ややバランスが悪い。
捕球時の姿勢が整わず、握り替えに手間取り、ステップが増える。
まだこれからの選手だから、バランスがよくなれば、持ち前の脚力と俊敏さが生きてくるだろう。
源田の守備で思い出したのは名遊撃手として知られた広岡達郎さん(巨人)の話。
カージナルスの一員として来日した名手、ドン・ブレイザーの練習に目を凝らしたが。
基本を繰り返すのみで、ちっともうまく見えなかった。

いざ実戦となって、うならされたそうだ。
どんな嫌らしいゴロでも、目線を変えずに自分の間合いで捕る。
ミスの可能性をゼロに近づける守備の極意。上手に見えない、というところにそれはあった。

源田の守備も飛んだり跳ねたりしないから、一見退屈だ。だがそれこそ名手の証し。
足を使っているからランニングスローなど曲芸をする必要がない。
私は遊撃出身なので、ダイヤモンドの重心はショートにある、というほどの自負を持っている。
(  日経  探球 山下大輔  より  )