1千兆円を超す借金を抱える日本は、健康体とはいえまい。
なのに選書を前に永田町で響く”減税コール”である。

   トランプ関税の衝撃は無論であろう。
ただ精緻な財源論が置き去りにされかねない流れはやはり危うい。

 心から「なるほど」と共感できるのは、目先だけでなく子や孫にも十分に目配りした政治ではなかろうか。
戦費を国債からひねり出し、資金面でも暴走に歯止めがきかなくなって。

   この国が転げ落ちてゆくさまを池田はつぶさに見た。
財政規律とは単に使えるお金の限度ではなく、針路を誤らぬための規律でもあるはずだ。

   人類は自ら律する力を持つと信ずる、と池田は言った。
その信頼を、私たちが裏切るわけにはいかない。

       ( 日経  春秋 より  )