69年に「男はつらいよ」が始まって以来、兄妹役で共演してきたが。
私は本当のお兄ちゃんのように感じていた。
「さくら、幸せかい?」「うまくやってるか?」

  仕事や恋で悩んでいた時、渥美さんは食事に誘い出してくれた。
でも細かなことを尋ねてくるわけでもない。
ただ、美味しいご飯をごちそうになって帰るだけ。
黙って私の傷付いた心を癒し、励ましてくれたんだと思う。

  世間から「さくら」として見られることに私がつかれた時にもこう諭してくれた。
「さくら、さくらって、ファンの方に言ってもらえて役者冥利に尽きるぞ。
そんな幸せなことはないんだから」。

     ( 日経  私の履歴書  より  倍賞千恵子 )