このところ、しばしば目にする「バブル期の風景」もステレオタイプかもしれない。
日経平均株価が史上最高値を更新し、回想はあの時代に及ぶ。

  盛り場のにぎわいやディスコの熱狂がよく登場するが、世の中全てがキンキラキンではなかった。
安くてうまいものを求める「B級グルメ」が定着するのはこの時代なのだ。

  バブルの象徴のように伝えられる「ジュリアナ東京」のオープンは91年の5月である。
すでに流れは変わり、しきりにバブル崩壊が報じられていた。

  それでもなぜか、記憶には誤って刷り込まれていく。玉音と土下座。バブル地とお立ち台。
人は、分かりやすい図式を求めてやまぬらしい。真実は、その陰に隠れがちである。

    ( 日経  春秋 より  )