10 年以上師事している尊敬するジャズピアノの先生に、セッションへの対応の仕方を尋ねたことがある。この方は日本在住のアメリカ人で、有名なグレン・ミラー楽団のピアニストをやっていたほどの猛者なのだが。

   彼の答えは単純明快。「 Play   clearly   and   simply   」。他人の目を気にするな。
いいカッコしようとするな、単純かつ明快に弾け、こう言って彼はいろいろ実例を弾いてくれた。

   「名手はこんなにもクリア&シンプルに弾くものなのか・・・」と思い知らされた。
それ以来セッションでも他の人の演奏を注意深く聴いて、うまい人は一体何が違うのかよく考えるようにした。

   「うまい人=余計なことをしない人」が私の結論だった。まさにクリア&シンプルなのだ。
自分を大きく見せようとして、意味なしに音楽を複雑にしない。威嚇的な大きい音も出さない。

   要するにモーツァルトの音楽がクリア&シンプルであるのと同じだ。

 

       ( 日経  文化 より 「緊張の日曜日」 )