「あゝ今日はクリスマスか。戦争はクリスマスを忘れさせる」。
グルメな昭和の喜劇スター、古川ロッパは日記にこう記している。

   1937年12月24日。芝居の稽古後、レストランの定食で七面鳥のロースに。
プラム・プディングを食べて、ああそうだったと気がついた。

   日中両軍の小競り合いは本格的な戦争へ広がりつつあったが、世間はまだのどかだ。
しかし太平洋戦争が始まるや警官が喜劇をどれほど目の敵としたかをロッパは苦々しく綴る。

   届け出たセリフ以外を口にしたと役者を出頭させ、名前が「米英的」だとカタカナ表記を禁じるのだ。
(「古川ロッパ昭和日記『戦中編』」)

           ( 日経 春秋  より )