最近、公開された映画のなかで最も評判の高い作品の一つは。三宅唱監督の「ケイコ、目を済ませて」だ。
聴覚障害のある元プロボクサー、小笠原恵子さんの自伝が原作である。
セコンドの指示や観客の声援は聞こえない。静寂の世界を想像させる映像に引き込まれる。

琴線に触れるセリフがあった。耳が不自由なけいこはプロデビュー後、健常者に勝利を重ねた。
彼女には特別な才能があるのか。取材に訪れた記者は、ジムの会長に質問する。
三浦友和さん演じる会長は、「才能はないからなぁ」とつぶやく。
でも続けて誇らしげにこう語るたのだった。「人間としての器量があるんですよ」。
( 日経  春秋より  )