新たな城下町を築かせたのは、言うまでもなく、経済安保という時代の潮流である。
米中対立が世界を分断し、ロシアのウクライナ侵攻がそれに拍車をかけた。

  侵攻から今日で2年。新しい工場から車で30ほどの小さな町に。
ウクライナから逃れてきた人たち十数人が静かに暮らす。長い人はもう1年半になるという。

  いつ帰れるかわからぬ戦況だ。帰郷をあきらめない人、もう日本に残ろうかと傾く人。
その心情を思えば竣工も手放しで喜べまい。

  TSMCがなぜこの日を選んだのかは知らない。だが台湾も明日は我が身だ。
分断による繁栄と戦争の惨禍は表裏であると改めて胸に刻むべきだりう。

    ( 日経  春秋 より  TSMC第一工場・今日、開所式 )