ー人形になるために工夫したことは。「例えば人間の手は雄弁で、人形らしさを出すために。
もみじ手と呼ばれる女形の手を勘十郎さんに制作いただいた。
人形は、ずっと無表情の人形遣いに遣われて宙に浮いている。この節がぎな感じがないと人形らしさが出ない。
伝統的な3人遣いに1人を加えて、4人で人間を浮かせた」

  ー人間浄瑠璃をして気づいたことは。
「最初に勘十郎さんから『人間捨ててください』とくぎを刺された。
人形自体は何も考えておらず、それに人形遣いが命を吹き込むからだ。
しかし一方で完全に人形になることもできなかった。半分人形、半分人間という境地だった」

「今まで誰も人形の目線から舞台を見渡したことはなかっただろう。
この目線から改めて思ったことは、人形は様々な要素によって動かされているということ。
遣い、語り、空間、お客さん・・・いろんな要素が人形を動かしている。
それは人間も一緒。人間は自分の意思で動いているように見えて。
様々なものに動かされているのではないか。

そうした哲学的な学びを得る贅沢な時間だった」
(  日経  森村泰昌が挑んだ「人間浄瑠璃」より  )