初めはみなが撮りたがる決定的瞬間。
例えば夕日をバックにしたライオンの群れなどを狙ったが、だんだん変わった。
8年目、初の個展を開くと「癒された」「元気が出た」との感想を聞き、ハッとした。
それこそ医療でやるべきことではないか。

それから医師としての方向性も明確になり、自然治癒力を引き出すことを主眼に置くようになった。
人間も大きないのちの循環の中にいるという意識が、無理な医療に向かわせなくなったのだ。

大地になれ、風になれ。被写体にレンズを向けるとき、こう自分に言い聞かせている。
自然の一部になっては初めて、動物たちはいのちの輝きを私に見せてくれるのだと思う。
(  日経  文化  胃腸内科医、野生動物を撮る より  )