西山は夢にあと一歩のところで届かなかった。それでも。
終局直後に行われたインタビューでは、その第一声で試験官を務めた5人の棋士に対する感謝を述べた。

    「難しい立場の中、5人の試験官の方々には、公式戦もあってお忙しい中。
あまりメリットもないような戦いということで、葛藤も拝見していたんですが。
それぞれの考えで向き合ってくださったことにはすごく感謝しています」

    その姿に感動したファンは多かった。

    西山の言葉をもっとも近いところで聞いていた柵木は「ビックリしました。
私なら絶対にそんなことは言えません。勝ってならともかく、負けた直後に言えるのはすごいです。
終局直後で頭が働いていない部分もあったのですが、そこだけは印象に残っています」と振り返った。
ただ続けて、終局直後の西山を直視は出来なかったとも語った。

    インタビューのあとは感想戦に。
この時点で報道陣のカメラはほとんど柵木の背から西山に向かっていた。
混乱を避けるため、感想戦のカメラは数グループに分けての入れ替わり撮影となっていた。
柵木の顔にカメラを向けたのは専門誌のカメラマンなど、わずかしかいなかったように思う。
西山の兄弟弟子である清水航三段と藤井奈々女流初段が感想戦を見守っていた。

     (  文春 オンライン より  )