自民党の真骨頂は「融通無碍さ」
—たしかに、「多様性」という意味では、意外にも自民党は内部に多様な意見を持つ人材を包括しています。
その「多様性」は、ときに驚くほどの行動を見せることも。

   第一次「政権交代」で野党に転落したときの自民党もそうでした。
長年の宿敵、社会党に総理の椅子を差し出し、連立を成功させて与党に返り咲いた。

   94年の村山政権誕生は、自民党のしぶとさ、強さの象徴です。

   下野という屈辱的な状態でも、自民党がバラバラになることはなく。
なりふり構わずの体で再び政権奪取を果たしたのは、さすがと言うか、なんと言うか……。

   橋下:その融通無碍さが自民党の真骨頂です。
よく言えば協調・歩み寄り・進化、悪く言えば打算・妥協の産物とも言える。
こうした柔軟性が、自民党の長期政権を可能にしてきました。
社会の変化、世論に応じて右に行きつ左に戻りつ、とにもかくにも前進していく。

   野党は自民党に「懐の深さ」を学ぶべき
以前、国民民主党の玉木雄一郎さんが語っていた言葉が的を射ていました。

  「自民党は違った意見の人でも、10のうち1の一致点があれば飲み込んで一緒にやっていく。
そこに強さの源泉がある。対して野党は10のうち9が一致していても、たった1つの違いでみんなケンカ別れ。
これでは勝てるはずがない」と。

   これに激しく同感する僕も、政治家をやっていた頃は。
「政策と理念の一致」を言い過ぎていたと反省しています。
政治的にケンカ状態にある相手に対しては、徹底的にやり込めようとしてきたし。
勝てばそれがすべてだと思ってきた節もある。

   でも、それを続けていても、絶対に自民党に伍するような大きな力は持てないんですよ。

   意見が異なる相手でも、相通じるところがあれば手を携え、共に歩む。
相手をフォローしながら吸収していける懐の深さを、野党も学ぶべきです。

   まあ僕が言えた義理ではないんですが(笑)、あくまでも自身の失敗から得た教訓です。

   もしかしたら、それは烏合と紙一重かもしれないけれど、異なる意見から学べることも多いはず。
有権者の意見は、多様性の塊です。自分と違う意見の人間は排除する……では。
永遠に支持率一けたから抜け出せません。

    ( 現代ビジネス より  )