ある患者さんから、なぜ人はうつ病になるのかと聞かれた。
その口ぶりから、自分が落ち込んで何もできないことが申し訳ないという雰囲気を感じた。

   私は落ち込むことができる力を生かすことが大事だと答えた。
何があっても落ち込まないというのは、現実を受け止められていないということだ。

   何があっても気にしないでいると、取り返しがつかなくなることも考えられる。
落ち込んだり不安になったりするのは、自分を守るための本能的な反応だ。

   だから、何があっても落ち込まないというのは、自然な心の防衛反応を生かせなくなる。
それに、こんなに弱気になる自分はダメな人間だと考えると、自分で自分を責めることになる。

   そうするとさらに元気がなくなる。
落ち込んだ時は、ちょっと立ち止まってこころの声に耳を傾けることだ。

   ネガティブな気持ちになる時は、その状況をこころが感じ取って警告を出していると考えてよい。
気持ちが落ち込むときは、大切なものをなくした可能性がある。

   仕事や勉強が思うようにいかない時も、人間関係のトラブルを体験した時も。
健康を害した時も、自分が期待するものを手に入れられなかったりなくしたりしから落ち込む。

  今は元気の動き回らないで、立ち止まって体勢を立て直した方がよいというこころのメッセージだ。

     (  日経 こころの健康学 より 「気分が落ち込んだ時」 )