「一緒に陸上をやらないか」。
1975年に入学した水戸市立美川中学校でサッカー部だった私に声をかけてくれたのは。

       今は美術工芸家として個展などを開いている元教師の班目和彦さんだ。
勧誘のきっかけは水戸市の総合体躯大会の100ⅿ走で2位に入ったこと。

     当時陸上部はなく私と先生だけの同好会でスタートした。
徒手空拳だったが、先生の指導で私は同校初の全国大会に出場。

    憧れの国立競技場を走り準決勝まで駒を進めた。
先生は長距離ランナーで短距離を教えるノウハウはない。

    だが、指導者がいる中学校と合同練習会を開いたり。
「目標タイムを達成したらごちそうしてやる」とおだてたりとあの手この手で私の意欲をかき立てる。

    口癖は「苦しくなれば無駄な動きがなくなる」。
この教えは後々まで生き、高校時代もインターハイ出場を達成した。

            (  日経 交遊抄 より 「2人だけの同好会」  )