彼の姿勢の背景に思いを巡らせた出来事がある。
ポスドク時代だったか、皆で彼の車に乗っては花火を見に行った。

  和気あいあいと話していると、彼がぽつりとこぼした。
「本当は花火が好きじゃないんだ」。

  爆音かそれとも光か、軍医として向かったアンゴラでの戦闘を思い出すという。
戦地を避けたい思いで米国を目指したのだ。なにも言葉を返せなかった。

  その後も学会で度々会い、学会の委員としてともに知恵を絞ったこともあった。
また近況報告に花を咲かせたい。

           ( 日経  交遊抄 より  )