ソウル在住だった金は財閥系企業に勤め、帰宅は深夜に及んだ。
任は専業主婦に転じ、ワンオペで2人の子の育児に追われた。

  「うつ病になりそうだった」。狭いアパートは家賃が高く、子を自塾に通わせる余裕はなかった。
子は友人と自分の境遇を比べて不安を見せた。

  金は22年に椎間板ヘルニアを患って休職し、南部の済州島で家族と1か月過ごした。
都会とは異なり、住民が心に余裕を持つ暮らしがそこにあった。

  同じ頃、子供が地元の小学校に通えば住宅を提供する槐山郡の制度を知った。
金は近く退社し、カフェに専念する予定だ。

  ソウル時代より収入は減る。それでも任は「若い頃はたくさんお金があれば幸せだと思っていた。
今はお金より『時間富者』になりたい」。
金は「他人が行く道と違っても、正解はそれだけじゃない」と子供に話す。

  (  日経  迫真 より )