いずれにせよ、こんな応急処置では根本的な解決にはならない。
「家庭のスパコンとしては安いが、ゲーム機なら高い」。

   こんな立ち位置を撤回して「ゲーム機」に徹するべきだ。
そのためには「プレイステーションの父」である久夛良木健さんがこのマシンに詰め込んだ理想を。

   ひとつずつ潰していくような作業が避けられない。私は自ら陣頭指揮をとって、これを実行した。
実際の作業は細かいことの積み重ねだ。

   そして最後には次世代型プレイステーション4で、久夛良木さんが「家庭のスパコン」の核と。
考えた独自開発の高性能半導体「セル」を廃し、米AMDからの調達に切り替えた。

   この過程で重要なのはSCEの命運がかかるコストを議論する会議には。
経営地トップである私ができるが限り出席するということだ。

   正直、会議で飛び交う技術論にはついていけない。それでもちゃんと事態の推移を見守るべきなのだ。
私はよく「臨場感が危機感を生む」と表現する。経営者が一緒に汗をかくことで現場に危機感が伝わる。

   それだけでなくそこで決めたことの責任は私が取るということをメンバーに示すこともできる。
リーダーの役割とはそういうものだ。   

 

 ( 日経  私の履歴書 より  平井 一夫  ソニー元社長 )