安田秀一君が商社から独立し、スポーツブランド「アンダーアーマー」を手掛けたとき。
プロ野球初の契約選手となったのが近鉄時代の私だ。

   野球とアメフト、競技こそ違うが同学年、ともに神奈川の高校でプレーし、旧知の仲だった。
野球の服は緩めが常識で、独特のぴちっとしたアンダーウエアに戸惑った。

   だが適度の締め付けによって体もよく動き、力が出ることが、じきに分かった。
瞬く間に多くの競技で愛される一大ブランドに育てた彼の才は、未来を見る目にあった。

   酒を酌み交わせばいつも、スポーツ選手の格好さとは、スポーツの楽しさとは。
といったとりとめのない話になった。

   それは彼が目先の利益にとらわれていなかった証拠。
だから、いつもジャージー姿、というスポーツ選手のイメージを変えられた。

     ( 日経 交遊抄 より 「未来を見る目」 )