忘れもしないのは、彼と隣の席で受けることになった模擬試験だ。
成績順位は学校のみんなが知ることになる。

   新参者にトップの座を奪われるわけに内科ない。
思いが強すぎ、出来心から私は高嶋君の回答をカンニングしてしまった。

   結果は私が7位で高嶋君は11位。後味の悪い学年トップの死守となった。
真相を打ち明けるまもなく高嶋君は中学受験で別の学校に進学した。

   それっきり連絡は途切れ30年も心の中にモヤモヤfが残っていた。
5年前に別の同級生が間を取り持ってくれて再会を果たした。

   カンニングを告白すると「実は俺も高橋をカンニングしてたんだよ」と高嶋君。
僕に後ろめたさを感じさせないようにとっさについたウソだろう。

   それでも心の霧がぱっと晴れた瞬間だった。

       (  日経  交遊抄 より 高橋 忠郎・パワーソリューションズ社長 )