しばらくして、下北沢のにあった彼の実家に招かれた。
自宅にはバイオリンやクラリネットが置かれ、バッハが流れてきた。

   クラシックに造詣が深く、自らチャリティー演奏会まで開くという音楽家としての一面に驚いた。
彼を通してクラシックの面白さに初めて触れた。

   彼はその後、先天性疾患領域の心臓外科医の道を選んだ。
患者は新生児が多く手術は困難を極めるが、彼の使命感と集中力により多くの命が救われた。

   そんな緊張感のある毎日でもプライベートでは大変さや忙しさを出すことなく。
仕事に追い込まれたサラリーマンの私を見て。

   「眉間にしわ寄せてはダメだ。笑顔が福を呼び込むよ」と教えてくれた。

     (  日経  交遊抄より 「音楽家の医師」 )